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PRのノウハウや概念など、さまざまな考え方が発信されていますが、
視点を変えて、新しいファクトを導き出す
という考え方に加え、
プロジェクト・サービスそのものにも工夫を凝らす(=磨く)
という過程が、さらに輝かせるために必要だと感じるようになりました。この感覚を、事例とそれに紐づくエッセンスとともにご紹介いたします。

MANGA ART HOTEL, TOKYO®
(2019)

価値がこもった言葉探し

マンガに囲まれたカプセルホテル。

5000冊のアート性の高い選書されたマンガ、建築・デザイン性の高いカプセルホテルの空間、これだけでも話題性に事欠かない「MANGA ART HOTEL, TOKYO®」がオープンしようとしていました。しかし「マンガのホテル」と呼ばれるだけでなく、この空間ならではの体験をより象徴的に伝えることができないかを検討しました。
制作チームとの議論を重ね、さらに最適な言葉を探るべくコピーライターさんとの打合せをリクエスト。そこで、

「眠れないホテル」

という言葉が生まれた瞬間、それだ!!!となりました。

「眠れないホテル」は多くのシーンで引用され、英語では”Quiet Escape” “To Lose Themselves In”などと訳され、このホテルならではの没入体験をまとって広がっていきました。

コピーライターの言葉に対する姿勢はとても学びになり、彼らとの打合せは発見に溢れています。PRでチカラを発揮する言葉は、広告で好まれる言葉・コピーと少し違い、想起のしやすさや親しみやすさなどがこもっています。そこを見つけ出す時間こそが、印象や呼ばれ方を左右します。

RADWIMPS 「SHIN SEKAI」
(2020〜2021)

ナラティブの丁寧な手ほどき

RADWIMPSがコロナ禍に挑戦したバーチャルライブ。

RADWIMPSは、PARTYが提供するVARPというシステムを駆使したバーチャルライブを、1年以上に渡って開催しました。Facebook社がMeta社になる前の、メタバースど真ん中のチャレンジです。

アーティストが築き上げてきたファンとの絆、バーチャルライブという新しい体験、それぞれにすばらしいストーリーが詰まっていました。

アーティストとファンとバーチャル体験が織りなすナラティブを、余すことなく伝えながら世界中の方々に体験していただくか…企画にあたり大切にしたことは「1人のファンとして響くものであるか」という視点です。

「エンドロールに名前が刻まれる」企画はその視点から生まれました。スマホでつながるバーチャル体験であること、ファンと一緒につくりあげる体験であること、誰も体験したことのないものへの参加の勇気を引き出すこと、これらを結びつける企画になりました。

ファンの視点で、アーティストにも憑依しながら企画することが、記憶に残る体験づくりにつながると考えています。

クレアージュ東京 & YOU健診啓発
(2019〜)

さまざまな声への傾聴

女性専用クリニックと女性特有の疾患の健診啓発活動。

「健診制度を変える」というミッションを掲げて、PR・ブランディングのサポートをさせていただいています。世の中の関心事、クリニックの運営状況など、コンスタントに情報を共有し合い、活動・アクションのヒントを探りながら並走しています。

女性特有の悩みや、健康に関わる内容を取り扱うため、女性のリアルな声を参考にすることをとても大切にしています。YOU健診を多くの方々に伝える活動でも、SNSやアンケート、調査などから得られた声を丁寧に見える化しています。

クレアージュ東京レディースドッククリニックのオープンから約1年、現在では予約がとりづらい状況にまでの反響をいただいています。

制度変革の実現に向け、時間をかけながら多くの方々の理解を得て、ステークホルダーと生活者の多様な声を活かしながら“常に磨き続けて”進行していきます。

ドライブインシアター2020

スピードと先読み

コロナ禍でリブートしたドライブインシアター。

このプロジェクトの経緯や実現できたことは、プラチナムのnote(コチラ)で以前ご紹介をさせていただきました。コロナ禍への突入により立ち上がったこのプロジェクトの難しさは「予測不能なものと向き合いながら、パイオニアとしてリードして、最高の体験をお届けする」ことでした。

Do it Theaterが実現しようとする体験、そこにどのような想いがあるかを示すべく、プロジェクト発足から4日後にステートメントを発信し、さらにその8日後にクラウドファンディングを開始、というスピード対応をしました。

当時は、コロナ対策のガイドラインは制定されてはいたものの、イベント実施の具体例も少なく、緩和に向けての段階的な条件も不明瞭だったため、医師らの見解も交えながら最適解をチームで導き出しながら準備を進めました。緊急事態宣言が発令されたら?開催を延長したら?感染者がでたら?さまざまなケースをシミュレーションし、PR面でのリスクも念頭に企画していました。

6月20日、県境をまたぐ移動が可能になった翌日、東京タワーの麓でドライブインシアターを実現させました。このノスタルジックでありながらアップデートされたエンタメ体験の実現のために、連日連夜アンテナを張り続け、企画や体験を研ぎ澄ます日々でした。

刻々と変化する状況に柔軟に対応しながら、複数の展開シナリオを想定してスピーディーに対応することも、プロジェクトが最大限に輝くためのPRの役割です。

P&G PANTENE
(2019)

コラボレーションによる昇華

「パンテーン」のブランドメッセージを伝える #HairWeGoプロジェクト。

アメリカの娯楽雑誌「People」にて、世界中から愛される存在になっていた“爆毛赤ちゃん” @babychanco「Get this kid a Pantene ad!(この赤ちゃんはパンテーンの広告に出演すべきだ!)」と紹介された記事を、パンテーンの責任者が偶然発見したことがきっかけで、このプロジェクトは立ち上がりました。

babychancoとのプロジェクトが動き出し、「美しい髪によって、女性が一歩前に踏み出す勇気をサポートする」というパンテーンのフィロソフィーをより込めるため、当時染めない・隠さない“グレイヘア”で賞賛を集めていた近藤サトさんとのコラボレーションをご提案。このコラボレーションで発信したメッセージは、国境を越え、世界中から多くの共感とリアクションが寄せられました。

個性や違いを愛することの大切さ、自分を表現する様々な選択肢があることを、髪を通じて体現していたお2人とだからこそ生まれたメッセージと表現でした。

人・企業・IPなど、さまざまなコラボレーションがあるなかで、必然性のあるコラボレーションが成立することで、想像を越えた反響や成果を得られ、そこを見極める視点はPRで培われるものの1つです。

PRの神も細部に宿る

プロジェクト・サービスそのものにも工夫を凝らす=「磨く」工程を経ることで、その取り組みは輝きを増していきます。

価値がこもった言葉探し
ナラティブの丁寧な手ほどき
さまざまな声への傾聴
スピードと先読み
コラボレーションによる昇華

タイトルでは「輝くPR」としていますが、日本語としては「PRで輝かせる」が正しいかもしれません。華やかな演出や、派手なプロモーションとともにPRすることも醍醐味でありつつ、眠れる魅力の掘り起こしが起点になったり、継続的な地道な活動によって輝きを放つことも多々あります。反対に、なにげないワンフレーズが意図せぬ方向に広がってしまう側面もあります。

「神は細部に宿る」という言葉がありますが、PRの神様も細部に宿る気がします。あるべき姿を追い求めて工夫を施しつつ、細部まで目を配りながら磨く工程こそが、本質的に輝くことにつながると信じています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


株式会社プラチナム
PRプロデューサー 村山