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2020年、原宿駅前にオープンした資生堂直営店「資生堂ビューティ・スクエア」は、「ビューティを発見し・遊び・シェアする体験・発信型スポット」をコンセプトに、化粧品販売だけでなく、デジタルを活用した体験型コンテンツやヘアメイクアップアーティストによるサロンを展開しています。

2022年にローンチした若年男性向けブランド「SIDEKICK」が購入できるのは、ここ「資生堂ビューティ・スクエア」だけ。ここでしか買えないこのブランドを起点に、ターゲット層に店舗に来てもらうため、早稲田大学広告研究会の学生たちと企画・実施しました。

早稲田大学広告研究会OGでもあり、プロジェクトに企画から携わった嶋元から、Z世代学生とともに彼らの視点になりきって創りあげたイベントの裏側をご紹介します。

“ここでしか買えない”ハードルを逆手にとった企画フレーム

「SIDEKICK」を日本で購入できるのは「資生堂ビューティ・スクエア」だけです。2022年6月にブランドローンチはしたものの、男性客の来訪が少ないこともありこれまでターゲットとの接点が限られており、認知獲得に課題がありました。

店舗来訪が今回のプロジェクトのミッションである一方で、ブランドの認知不足という状況は、大きなハードルになっていました。あらゆる施策を検討し、店頭誘引まで寄与できる方法を探りました。

辿り着いたのが「Z世代自身を企画考案段階から巻き込んだ学生共同型のプロジェクト」という方向性です。認知獲得できていないからこそ、ターゲット自体を企画の主体におくことで、彼らの中での情報の連鎖、熱の連鎖を狙うという発想です。

今回一緒にプロジェクトを推進してもらうことになったのが早稲田大学広告研究会です。広告考案やクリエイティブ制作、イベント運営など、企業との実績は多くある一方で、世の中への実装に至るプロジェクトが少ない点はOGとしても課題に感じていました。企画の考案だけでなく実装までを併走し、広告研究会ならではの感度の高さやZ世代の視点で熱量を持って取り組んでもらえると考えて、パートナーとしてお声がけしました。

予想外のハードルと、それを超えるためのカギ

12月実施のイベントに向けて、Z世代学生からは事前ヒアリングで以下のような声が寄せられました。

「メンズコスメの普及もあり興味はあるものの、化粧品売場は周りの目が気になり入りづらい」「化粧や映え空間など、普段は女性向けとされているものも、じつはやってみたい」「男性が資生堂ビューティ・スクエアにいくには、仲間同士で楽しめそうな何かがあればいい」「店舗へ入る動機がほしい」

当初想定していたよりも“美の施設”である「資生堂ビューティ・スクエア」に対して、Z世代にとっては足を踏み入れるハードルが高いこと、そして、男性美容への関心が高まる一方で美容に対する心理的ハードルがいくつも存在することがみえてきました。

広告研究会との議論の末たどり着いた結論として、

Z世代男性同士で「ちょっと行ってみようよ」と友達を誘いやすく、じつはやってみたかった美容体験ができて、楽しい思い出とともにSIDEKICKを持ち帰えることができる体験をつくる

を目標に、具体的な企画アイデアを検討しました。

“美の施設”のハードルを超えるメンズのためのアイデア「夜のゲームセンター」

エンタメ性のあるコンテンツと商品体験を両方実現するアイデアとして生まれたのが「夜のゲームセンター」です。

イベントでは、入り口で行う肌分析をもとに、分析結果に応じた色のステッカーやコインを配布。UFOキャッチャーや巨大ジェンガ、ダーツなどターゲット層に馴染みあるゲームセンターのコンテンツで遊びながら、最終的に集めたコイン数に応じた製品サンプルをプレゼントするという体験ができる空間をつくりました。

ただ友達同士で遊ぶだけではなく、肌分析を通じて美容を自分ごと化するきっかけをつくり、SIDEKICKのトライアルまでを届ける形で企画を実現させました。

また「化粧を試したいけど試せない」という声に応えるべく、泡体験ができるブースや、プロによる簡単なメイクアップと小道具やライトを使ったセルフ写真館を設置。ターゲット層のやってみたいを叶えるコンテンツも用意しました。

広告研究会やメンバーからの発信も積極的に行ったほか、学生団体を巻き込んで4大学9サークルの学生団体と連携。制作過程からオープニングアクトまで、イベント本番を一緒に盛り上げていきました。

この企画は学生起点の取り組みとして多くのメディアで紹介され、SNS投稿の総リーチ数は200万超で、店舗からの発信では普段なかなか届かないターゲット層への認知に寄与。ターゲット層にとどまらず、美容感度の高い方など幅広い方々に店舗へ来場していただきました。

ターゲットである若者男性の生の声をフルに活かした企画にすることで、ブランドにとっても新しい視点が得られたプロジェクトを実現することができました。



プラチナム 嶋元