プラチナムのAIエバンジェリスト伊藤によるコラムです。
#生成AI #AIとPR #AIO #広報 #マーケティング #ブランディング
2026.10.28 / How To

生成AIが急速に普及し、PRの仕事も大きく変わり始めています。
文章を書く。情報を調べる。大量の記事を分析する。企画のたたき台をつくる。ほんの数年前まで人が多くの時間をかけていたこれらの仕事を、AIは数秒から数分でこなすようになりました。AIの話題になると、「AIによってPRの仕事はなくなるのか」という問いを耳にすることがあります。
少なくとも私は、PRそのものがなくなるとは考えていません。一方で、PRを構成する実務や、情報流通への向き合い方は大きく変わっていくはずです。だからいま考えるべきなのは、PRがなくなるかどうかではなく、AI時代にPRの役割と実務をどう更新するかだと思っています。
まず前提として、PRは「メディアに出す技術」ではありません。パブリシティは重要な手段の一つですが、それ自体が目的ではないからです。
プラチナムでは、日本広報学会の「広報の定義」(2023年)などを踏まえ、PRを「多様なステークホルダーとの双方向の関係を通じて、社会の中でブランドが‘どう見られ、どう語られるか’を設計する経営機能」と定義しています。そのうえでPRの役割を、次の3段階で捉えています。
情報を「届ける」だけではなく、価値ある認識が社会に「残る」ように設計するのです。AI時代になっても、こうしたPRの本質は変わりません。変わるのは、その価値を社会に届けるための「情報流通」のほうだと考えます。

これまで企業や商品について知りたいとき、多くの人は検索エンジンを使い、複数のサイトを自分で読み比べていました。いまは「この会社はどんな会社?」「A社とB社ならどちらがいい?」と、生成AIに直接聞けます。
AIは情報を探すだけでなく、整理し、比較し、一つの回答として提示します。つまり生成AIは、情報探索から理解、比較、意思決定までを仲介する「新しい入口」になり始めています。
情報流通の入口は、マスメディアに加えて、検索やSNSへと広がってきました。そこにAIが加わり、企業には「AIからどう理解され、どう語られるか」という新しい論点が生まれています。AI検索上でブランドがどう理解され、どう語られているかも、今後のPR戦略を考えるうえで無視できない領域になっていくでしょう。
では、AIは回答をつくるときに何を読んでいるのでしょうか。米国のPR向けソフトウェア企業Muck Rackが2026年5月に公表した調査「What Is AI Reading?」では、17業界を対象に、ChatGPT・Claude・Geminiの回答に含まれた2,500万件以上のリンクを分析しています。同調査の分類では、引用の84%がアーンドメディア(広告費を払って掲載するのではない、第三者による記事や情報)に当たりました。報道記事だけで全体の27%を占める一方、広告や記事広告は0.3%でした。
出典:Muck Rack「What Is AI Reading?」
私たちがPRでこれまで扱ってきた「社会からどう語られているか」という領域が、AIの回答においても重要な情報源になっていることが見えてきます。
一方で、AI検索への最適化(AIO)そのものが永続的な競争優位になるとは考えていません。
現在はまだ、企業によってAI検索への対応に大きな差があります。しかし数年もすれば、情報の構造化、AIに参照されやすいコンテンツづくり、AI上での見え方の計測といった施策は一般化している可能性があります。技術的なAI対策は、次第にコモディティ化していくと私は考えています。
だからこそ、ブランドの差をつくるのは、次のようなものを生み出す力です。
「AIに食べさせるための情報」を量産するだけでは、この差は生まれません。AI検索は、世の中で語られている情報も参照しながら回答をつくります。語られる理由そのものをつくるのは、今も昔もPRの仕事です。
AI時代のPR会社には、AI上でのブランドの見え方を含め、情報環境全体を捉える視点も必要になります。社会の中でどのような情報が流通し、それによってブランドがどう理解されているのかを把握し、必要なコミュニケーションを設計する。これは、PRが本来担ってきた「社会の反応を捉え、経営にフィードバックする」という役割の延長線上にある仕事です。
変わるのは、情報流通と手段です。PRが目指すものは変わりません。
この変化を受け入れ、AIとうまく付き合いながら、PRが提供できる価値そのものを広げていく。それが、AI時代のPR会社に求められていることだと思います。